理想のキャリアって?
「理想のキャリア」とは、どのようなものでしょうか。
よく言われるのは「Will/Can/Must」が重なっている仕事でキャリアを積んでいくことです。
- Will……自分のやりたいこと
- Can……自分にできること
- Must……会社や社会から求められること
40代近いマーケティングのスペシャリストの談話でこんな話がありました。以下引用になります。
「学生時代、『マーケターってなんかカッコよさそう』というイメージだけでマーケティング職に就き、以来15年ほどマーケ畑でキャリアを積んできた。けれど、心のどこかで『この仕事、自分には向いてないかも』という思いがある。先日軽い気持ちで適性診断を受けてみたら、やはりマーケターとはかけ離れた、むしろ『研究職』に向く特性だという診断が出た。自分でも『確かにそうかも』と思った」
自身の中でこんな思いを抱えながら現在の仕事に就いている方は少なくないと思います。そして現在の仕事に適正が合っていない場合、こういう後悔の言葉が頭をかけめぐるのではないでしょうか。
「もっと自分が得意なことを把握した上で就活をすればよかった……と、今になって思う」
上記のケースは第三者に診てもらって悟ることができましたが、第三者に診られなくとも自分自身でわかるようなケースでは、向いていないことに敢えて挑戦する人はほとんどいないと思います。たとえば、高所恐怖症の人がとび職になろうとすることや、血を見るのも怖くて嫌だという人が外科医になろうとすることです。ご自身で自覚できている場合はこういった無謀な職業選択は避けることができると思います。
無謀な職業選択はよいとして、自分でも向いているのかもわからず、もやもやした気持ちで仕事を続けていくような状態にならないようにするにはどうしたらよいでしょうか。
これから就活を始める学生のみなさんは、自分に何ができるか、向いているかがよく分からず、「やりたいこと(≒憧れていること)」に比重をおいて職業を選ぼうとしている方が多いのではないでしょうか。
また、新卒入社してまだ数年以内——いわゆる「第二新卒」のみなさんの中にも、「希望の会社に入ったものの、何だかしっくりこない」とモヤモヤ感を抱えている方がいらっしゃると思います。
そこで、学生~第二新卒のうちから「自分にできること(Can)」が何なのかを把握するための方法をご紹介します。
第三者と「壁打ち」をする
一人で考え続けていても、かえって迷路にはまることがあります。そこで、第三者と「壁打ち」をすることをおすすめします。壁打ちとは、自分の考えや気持ちを第三者に話し、相手から返ってくる反応から気づきを得て、さらに考えを深めていく……という作業です。
友人が相手でも、話すことで頭の中を整理する効果は得られますが、やはり人生経験が長い人のほうが適切に導いてもらえる可能性が高いでしょう。
第三者としては大学の就職課の方、バイト先の先輩・上司、ハローワークで職業相談を行っている方などでもよいですし、より客観的視点と人材マーケットの知識を持っているという点では、転職エージェントのコンサルタント、キャリアコーチ、キャリアメンターなどとしてサービスを提供している人々も、相談相手として適しています。
大学の就職課もぜひ活用してください。実はリクルートなどの転職エージェントでキャリアアドバイザーを務めた経験を持つ人が、アルバイト的に学生の相談に乗っていたりします。
彼らはさまざまな職業の知識とともに、キャリアカウンセリングの資格も持ち、「思考を整理する方法」を知っています。そうしたプロのサポートを受けるのも有効です。
では、壁打ち相手とどんな対話をするか。「Must」は必然的に生まれてくるものなので、「Can」、「Will」について話をしてみましょう。
「Can」の見つけ方:「人より得意な役回り」を整理する
ゼミ、サークル、アルバイトなど、みなさん何らかのコミュニティに所属して活動していると思います。大学だけでなく高校時代にさかのぼってもいいので、まずは「日々、自分が何をしていたか」を書き出してみましょう。
それらの活動の中で、「他のメンバーよりも少し得意なこと」「自然と担っていた役回り」などを洗い出します。それを「汎用スキル」に置き換えます。
例えば、同じゼミやサークル活動の中でも、役割やスキルはさまざまです。
- 「会計を担当していた」→「数字に強い」
- 「外部機関・企業に協力を依頼していた」→「交渉力がある」
- 「メンバー同士の意見の対立を仲裁していた」→「調整力がある」
また、ご自身の生活をふりかえってみて、ご自身の特性に気づくことはないでしょうか。
- 「電車の運航に遅延があって約束の時間に間に合わない状況になっても、約束の相手に遅刻することを伝えることができる」→「状況に応じた判断ができる」
- 「まわりで怖い人が怒鳴るなどトラブルを起こしていても、冷静でいられる」→「胆力がある」
このように、それぞれ得意とすることから、自身の汎用スキル=ポータブルスキル(業種・職種にかかわらず持ち運びできるスキル)を探ってみましょう。それがあなたの「Can」と言えるものです。
「Will」の見つけ方:漠然とした憧れに対して「なぜ」を深掘りする
冒頭では、「カッコよさそう」というイメージだけでマーケティング職に就き、ずっとモヤモヤ感を抱いている方のお話をしました。
仕事選びにあたって「Will」を軸にすることは大切ですが、漠然とした憧れだけで飛び込むと、遅かれ早かれ行き詰まってしまうことは多いようです。
そこで、壁打ちの中で、「なぜ憧れるのか」、「どういう部分に憧れるのか」を深掘りしていきましょう。
同じような仕事をしている方でも、「世の中に必要とされているものを提供し、困っている人を助けたい」という志向の人もいれば、「トレンドやブームを生み出したい」という志向の人もいます。
その背景には、「誰かに喜ばれた」、「こんなものを作った時に達成感を得た」など、何らかの原体験があるものです。
それを壁打ち相手と一緒に振り返るうちに、自身が大切にしたいものが見えてきて、目標となる「Will」が明確になるかもしれません。
世の中にどんな仕事があるかを知ることも必要
「Can」と「Will」を接続させて適職に出合うためには、世の中にどんな仕事があるかを知ることも大切です。存在を知らなければ、自分に合う仕事かどうかをイメージすることもできません。
「業界研究」、「職種研究」などの書籍や情報サイトはたくさんありますから、ぜひ仕事に関する知識を広げてください。さらには、いろいろな人に話を聴き、「リアルな声」を知ることが大切です。
興味を持った業界・職種があれば、その仕事に就いている人たちが集まるSNSなどにアクセスし、どんな会話が交わされているかを覗いてみてもいいでしょう。
OB・OGに話を聞いてみるのもおすすめです。ゼミやサークルの先輩にアプローチするほか、最近ではOB・OGを紹介してくれるサービスもあるので、「ロールモデル」になりそうな人を見つけてみてはいかがでしょうか。